2013年6月29日土曜日

理系的思考法

ニセ科学を拾い上げて、ひとつひとつ反論を挙げていってもきりがない。
まあ、やるけど。
嘘がまかり通る事の方が気に入らない。

今回は、理系的なセンスというか、理系ならそうするだろうなという考え方があるので、ちょっとばかりつらつらと書くよ。

例えば、

  「◯◯物質が基準の2倍も検出されました」

という新聞記事をみかけたとする。

うわぁ、それは大変。基準の2倍とかヤバいでしょ、と言う前によく考えて。ポイントは2点。

◆ 本当にヤバいほどの量なのか?

例えば、その基準値が 1mg だったとする。1円玉が 1g とされているので、これの 1/1000。かなり小さい。これが、2倍になったとして、ものすごく増えたと言えるんだろうか?

マスコミは「2倍」という情報をあおりとして強調する習性があるように思える。実際に考慮しなければならない量なのかどうかは、一歩引いた場所からながめてみると、よく見えるようになるだろう。

◆ 基準値が策定された背景を知る

国やその他団体が定めた様々な規制基準は、もちろん膨大な研究によって算出されたものなんだけど、その基準を超えたら即アウトなのかどうかはよく考えた方がいい。

そもそも、基準値を超えない範囲では影響ゼロで、超えた途端に影響 100% になるとか、そんなデジタルなものはこの世にない。

また、安全性の余裕を大きくとっている基準値もある。国際的に比較すると、日本の基準値は物凄く低いレベルに設定されていることさえある。

つまり、ここでも、「2倍」という情報にとらわれず、結局のところまだ大丈夫なのか直ちに対策を取ったほうがいいのかは、その基準値が策定された背景を知っておく必要があるということ。

まとめると、「2倍」とか、事実の一部だけに着目しているような情報をそのまま鵜呑みにはせず、一歩引いた視点で「結果としてその数値はいいのか悪いのか」を落ち着いて考える癖をつけようね、ということ。


基準値については、国や団体から「なぜその基準値になったのか」の情報は出ているとはずなので、ネットで探すなりして、自分の頭で判断する習慣をつけよう。

その習慣に、格好いい名前をつけるとすると、「理系的思考法」かな、と。

2013年6月23日日曜日

カソクキッズ

学生の頃、教養部で量子力学の講義を受けたけど、さっぱり分からなかった。担当教授は、何度も、

空間を加熱すると、ゆで卵が腐りにくくなる。
と、新手のトンデモ商品の宣伝文句のようなことを繰り返す。
何言ってんのか、さっぱりわからない。

とは言え、量子力学や素粒子物理学が、現代の科学の礎となっていることは明白であり、卑しくも理系学部を卒業している身としては、教養のひとつとしてたしなんでおく必要はあると思った。

でも、それから、もう何十年も経過してしまったよね…。

最近、ヒッグス粒子が発見されたとか、ILC(国際リニアコライダー)誘致だとか、素粒子物理学関係の話題が目につくようになった。(ILC誘致については、東北と九州が名乗りをあげているけど、そのほかの地域では馴染みが薄いかも)

ああ、これは量子力学や素粒子物理学を勉強しなおしなさいという、何かのお告げだよね。もうがんばる。かなりがんばる。

そんな時、素粒子物理学の理解を深めることができる、ものすごく優秀な教科書を見つけた。

それが、カソクキッズだ。

中学生が、高エネルギー加速器研究機構(KEK)を訪れ、素粒子物理学について知識を深めていくという内容の漫画だ。漫画ってあなどることなかれ。内容は非常にガチ。
KEK が監修ということで、間違った内容になっていないか、入念にチェックされているらしい。かなりお勧め。

いま、第二シーズンが連載中だが、第一シーズンも閲覧でき、紙の本も入手できるので、手元に置いて何度も読み返すのには便利だ。

知識を深めたい人も、飲み屋で知ったかぶりをしたい人も、是非。

マイナスイオンはニセ科学

いきなり結論を書いてしまったのでこれでお終い。とはいかないので、少し書くよ。

まず、「イオン」の定義。

電荷をもつ粒子をイオンといい、正の電荷を持つ陽イオンと、負の電荷をもつ陰イオンがある。
これだけ。

電荷って何だ? 原子は原子核と、それを取り巻く電子で構成される。
その電子のいくつかを失うと、その原子は電気的に「正の電荷」を持つことになる。これが陽イオン。逆に電子を取り込んで電気的に「負の電荷」を持った状態が陰イオン。

例えば、塩化ナトリウム NaCl を水に溶かすと、陽イオン Na+ と、陰イオン Cl- に別れる。これを「電離」という。
Na+ は、電子配列的にネオン Ne と同じとなり、安定した状態になる。
Cl- は、電子配列的にアルゴン Ar と同じとなり、やはり安定した状態になる。

ネオン Ne や、アルゴン Ar は、不活性ガスといって、他の物質と反応しにくく、化学的に安定した物質であることは、皆さん習ったとおり。

さて、ここまでで、マイナスイオンという言葉はどこにも出てこない。

ネットで探すと、マイナスイオンの説明は、どこか不明確でハッキリしない。そりゃそうだ。学問としてなんら体系的にまとまっていないからだ。
まとまってないのは、研究が不十分か、そもそも学問として成り立たないニセ科学だから。

サイトによっては、「滝の周りが清々しく感じるのは、水が岩にぶつかって細分化する時に、マイナスイオンになるから」という解説がある。物理的に細分化してるだけで、陰イオンになってるわけではないらしい。
もし、水が電離(イオン化)するなら、水素イオン H+ と、水酸化物イオン OH- が生成されているはずである。
せいぜい数メートルの落差で水が岩に叩きつけられて、電離が起こるようなエネルギーを得ているとは当然考えにくいし、あるはずがない。水はそもそも共有結合だ。

百歩譲って、マイナスイオンが学術的にイオンの仲間だとするなら、そのもとになっている原子(多原子)の化学式は何なのか? そこを言及しているサイトはない。
ただただ、「マイナスイオンが発生する」としか書かれてない。

これが、マイナスイオンはニセ科学と判断する理由。

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2013-06-23 23:59 一部修正

2013年6月8日土曜日

科学リテラシーを養ってる?

「科学リテラシーに乏しい人が多い」と常に感じている。

まず、言葉の定義から。「科学」は日本語だから誰でも分かる。
リテラシーとは、元々は「識字」、つまり、文字を読み書きできる能力の事。
ここでの意味は、Wikipedia によれば、
何らかの表現されたものを、適切に理解・解釈し、分析し、また記述・表現する能力
だそうだ。
まとめると、「科学的な事象に対し、適切な判断ができる能力」ということになる。

これに欠けていると思われる人が多い。

別に専門家のような知識が必要だと言っているわけではない。
みなさんが、小学校や中学校の授業で習った程度の知識で充分なんだ。

「酵素」が流行っているらしい。体にいいらしい。
でもちょっと待って。そういうの、鵜呑みにしていいの?

そもそも酵素って何?

Wikipedia によれば、
酵素(こうそ)とは、生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子である。
難しい言葉で説明された。
「触媒」とは、何らかの化学反応を促進する物質で、反応の前後で、それ自体は変化しないものを指す。

小学校の理科の実験を思い出して。

「過酸化水素水に二酸化マンガンを入れると、過酸化水素水が分解されて水と酸素が発生する。この時、二酸化マンガン自体は変化せず、反応の触媒として働いた」

これが触媒。上の説明では、「酵素は触媒として機能する分子」とあるので、酵素は、体の中で起こる化学反応を促進する物質だということが分かる。

もう一点。
多くの酵素は生体内で作り出されるタンパク質を基にして構成されている。
 この、「生体内で作り出される」という点が重要。外から入ってくることは無いんだ。言い換えると、「食ったものがそのまま使われるわけじゃない」ということだ。

みなさんは、小学校の理科で、食べたものがどのように消化・吸収されるのかを習った。
ざっくりと、次のように習ったはず。

食べたものは、消化の過程で分解され、
  • 炭水化物は、ブドウ糖になる
  • タンパク質は、アミノ酸になる
  • 脂肪は、脂肪酸とグリセリンになる
分解とは、ざっくりと言うと、「口からはいった食べ物は、小腸の壁から吸収するには大きすぎるので、化学的に(分子レベルで)小さくすること」なんだよね。

もう気づいているだろう。酵素はタンパク質の一種なので、例え口から摂取したとしても、消化の過程で分解されてしまい、そのままの形で体内に入るわけじゃない、というのが結論。

よく聞く例え話の、「頭髪が薄いので、髪を増やそうと思って、髪をたくさん食べました」と同じレベルの話なんだよ。おかしいと思わない?

深い知識が必要なわけではない。基礎的な知識があれば、その延長線上で、「あれ? それっておかしんじゃない?」と気づく能力こそが科学リテラシーなんだと思う。

科学リテラシーを養おうよ。だまされないために。

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2013-06-08 19:32 誤変換を修正

復帰

お久しぶりです。
3年のブランクを経て、ブログを復活することを、ここに高らかに宣言するよ。

私的な話をしてもつまらないが、この3年間は俺の人生の中でも、上位3位に入賞するぐらいたくさんのイベントが発生した。

ざっくり書くね。

リストラされた → iOS アプリ開発で生計を立てようとした → 売れなかった → 知人のゲーム会社のネトゲ開発を受託 → 開発終了 → 路頭に迷う → 某 IT 企業に中途採用された → ソシャゲ作ってる(イマココ)

けっこういい歳のおっさんなんで、中途採用してくれるとこなんか全然無いね。
どれだけ使えるか分からないやつに高い賃金払うぐらいなら、若くて安い労働者をたくさん雇ったほうが楽だということらしい。

「65歳定年制度なんか導入されて、古い人が会社に居座るから、若い人が就職難になるんだ」という主張は真っ向から否定する。歳がいってからの転職はほぼ 100% 無理。たとえ手に職を持っていても、だ。

まあ、俺の話はこれぐらいで…。


今回ブログを復活させようと思ったきっかけは、暇ですることがないから、ではない。
そもそも、何か伝えたいことがあるから、ブログを始めたわけで、その意欲が失われたから永い間休止していた。

でも今は伝えたいことがある。

  「似非科学をぶっ潰したい」

いちおう理系の学部を卒業しているので、基礎的な科学的知識は備えているつもり。専門家に比べればそれは浅い知識だとは思うが、世にはびこる似非科学は看過できないほど酷いものが多い。

では、どうすればいいのかという答えが、ここにあった。

答えは簡単、正しい意見よりも間違った意見を目にする頻度が圧倒的に高いからです。
なるほど。そういうことか。
では援護射撃をしましょう。一発でも撃ったほうが世のためになるのだというならば。

もちろん、それ以外のネタも書いていくつもり。よろしくお願いします。

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2013-06-08 21:25 誤字修正