2008年6月22日日曜日

「チップチューン」というジャンル

 なぜか雑貨屋に陳列されていた CD 。

FAMILIAR COMPUTING WORLD (8bit Project)

大ヒットJ-POP から歴史的名曲まで、すべてをファミコン・サウンドで再現!

 そういえば以前話を聞いた事がある。あえて制限の多いチープな音源を駆使しサウンドを構築する人たちのことを…。「チップチューン」と呼ばれるジャンルらしい。決して高機能とは言えない音源チップで、最大限の効果を上げるために職人芸ともいえるテクニックでチューニングする、という事なんだろう。

 何がともあれ、Rydeen と Technopolis がエントリーされていれば、無条件に衝動買いの対象となる。YMO が、ファミコンサウンドで、どのようにアレンジされているか興味津々だ。

 ファミコン登場より前に活躍した YMO は、ともすればピコピコサウンドと陰口をたたかれがちだった。しかし、解散後の(正確には「散開」したあとに「再生」したが、YMO が今どうなっているのか不明)彼らの評価を見れば、単なるイロモノ集団では無かったことは明らかだ。

 その YMO のデビューアルバムである、「Yellow Magic Orchestra」に、業務用ビデオゲームの音源を模した曲が存在する。タイトルはそのままズバリの「COMPUTER GAME "Theme from the Circus"」と「COMPUTER GAME "Theme from the Invader"」だ。ある意味チップチューンのハシリとも言えなくはない。

 現在の若い世代はどうか分からないが、ゲーム開発会社でサウンドを担当する者のほとんどが YMO に影響を受けてる、と、まことしやかにささやかれた時代があった。実際のところ YMO の影響力はすさまじく、YMO をまねて、いわゆる「打ち込み」でコンピューターサウンドの世界に入り込み、そのままゲーム業界入りしたという人の話を良く聞いた。その意味では、YMO は日本のテクノの父(まさにテクノドン)のみならず、ゲームサウンドの父でもあったわけだ。

 その YMO サウンドを、再び古いサウンドチップで再構築する人たちがいる。なんというか、連綿と流れるコンピューターサウンドの血筋と言えばいいのか、正のフィードバックで閉じたすばらしいループが形成されていると言えよう。

 良く見れば、ボーナストラックの担当は松武秀樹だ。コアな YMO ファンなら既知の人物だが「4人目のYMO」と称される人だ。「COMPUTER GAME "Theme from the Circus"」のチップチューンバージョンは氏の担当だが、これがまたすばらしい。というか、シンセサイザーでエミュレートしていた PSG サウンドを、本物の PSG で乗せ換えた(PSG チップエミュレータによるものだろうが)わけで、ある意味「本物に先祖がえりした」と言えなくもない。

 制限があるからこそ、本当の技量が試される。そう再認識した。

【追記】
 タイトルの「FAMILIAR COMPUTING WORLD」は、もちろん「FAMILY COMPUTER」のもじりだが、後半の「COMPUTING WORLD」は、KRAFTWERK の「COMPUTER WORLD」のもじりだ。今、気付いた。ジャケットもそっくりで遊び心満点。

KRAFTWERK - COMPUTER WORLD


【更に追記】
 タイトーの「スペースインベーダー」の音源は PSG などではなく、オリジナルの音源回路を設計し実装していたようだ。確かに、PSG の時代よりはずっと前の話だ。
[CEDEC 2007]タイトーサウンドチーム「ZUNTATA」によるゲームサウンド発達史入門

 ZUNTATA か。久しぶりに名前を耳にした。「ダライアス」のボディソニックシステムで腰をマッサージされていたのは、いつのことだったか…。そいうえば、以前住んでいたアパートの近くにタイトーの開発部があったな。何もかも、みな懐かしい…。