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2013年6月29日土曜日

理系的思考法

ニセ科学を拾い上げて、ひとつひとつ反論を挙げていってもきりがない。
まあ、やるけど。
嘘がまかり通る事の方が気に入らない。

今回は、理系的なセンスというか、理系ならそうするだろうなという考え方があるので、ちょっとばかりつらつらと書くよ。

例えば、

  「◯◯物質が基準の2倍も検出されました」

という新聞記事をみかけたとする。

うわぁ、それは大変。基準の2倍とかヤバいでしょ、と言う前によく考えて。ポイントは2点。

◆ 本当にヤバいほどの量なのか?

例えば、その基準値が 1mg だったとする。1円玉が 1g とされているので、これの 1/1000。かなり小さい。これが、2倍になったとして、ものすごく増えたと言えるんだろうか?

マスコミは「2倍」という情報をあおりとして強調する習性があるように思える。実際に考慮しなければならない量なのかどうかは、一歩引いた場所からながめてみると、よく見えるようになるだろう。

◆ 基準値が策定された背景を知る

国やその他団体が定めた様々な規制基準は、もちろん膨大な研究によって算出されたものなんだけど、その基準を超えたら即アウトなのかどうかはよく考えた方がいい。

そもそも、基準値を超えない範囲では影響ゼロで、超えた途端に影響 100% になるとか、そんなデジタルなものはこの世にない。

また、安全性の余裕を大きくとっている基準値もある。国際的に比較すると、日本の基準値は物凄く低いレベルに設定されていることさえある。

つまり、ここでも、「2倍」という情報にとらわれず、結局のところまだ大丈夫なのか直ちに対策を取ったほうがいいのかは、その基準値が策定された背景を知っておく必要があるということ。

まとめると、「2倍」とか、事実の一部だけに着目しているような情報をそのまま鵜呑みにはせず、一歩引いた視点で「結果としてその数値はいいのか悪いのか」を落ち着いて考える癖をつけようね、ということ。


基準値については、国や団体から「なぜその基準値になったのか」の情報は出ているとはずなので、ネットで探すなりして、自分の頭で判断する習慣をつけよう。

その習慣に、格好いい名前をつけるとすると、「理系的思考法」かな、と。

2013年6月23日日曜日

カソクキッズ

学生の頃、教養部で量子力学の講義を受けたけど、さっぱり分からなかった。担当教授は、何度も、

空間を加熱すると、ゆで卵が腐りにくくなる。
と、新手のトンデモ商品の宣伝文句のようなことを繰り返す。
何言ってんのか、さっぱりわからない。

とは言え、量子力学や素粒子物理学が、現代の科学の礎となっていることは明白であり、卑しくも理系学部を卒業している身としては、教養のひとつとしてたしなんでおく必要はあると思った。

でも、それから、もう何十年も経過してしまったよね…。

最近、ヒッグス粒子が発見されたとか、ILC(国際リニアコライダー)誘致だとか、素粒子物理学関係の話題が目につくようになった。(ILC誘致については、東北と九州が名乗りをあげているけど、そのほかの地域では馴染みが薄いかも)

ああ、これは量子力学や素粒子物理学を勉強しなおしなさいという、何かのお告げだよね。もうがんばる。かなりがんばる。

そんな時、素粒子物理学の理解を深めることができる、ものすごく優秀な教科書を見つけた。

それが、カソクキッズだ。

中学生が、高エネルギー加速器研究機構(KEK)を訪れ、素粒子物理学について知識を深めていくという内容の漫画だ。漫画ってあなどることなかれ。内容は非常にガチ。
KEK が監修ということで、間違った内容になっていないか、入念にチェックされているらしい。かなりお勧め。

いま、第二シーズンが連載中だが、第一シーズンも閲覧でき、紙の本も入手できるので、手元に置いて何度も読み返すのには便利だ。

知識を深めたい人も、飲み屋で知ったかぶりをしたい人も、是非。

マイナスイオンはニセ科学

いきなり結論を書いてしまったのでこれでお終い。とはいかないので、少し書くよ。

まず、「イオン」の定義。

電荷をもつ粒子をイオンといい、正の電荷を持つ陽イオンと、負の電荷をもつ陰イオンがある。
これだけ。

電荷って何だ? 原子は原子核と、それを取り巻く電子で構成される。
その電子のいくつかを失うと、その原子は電気的に「正の電荷」を持つことになる。これが陽イオン。逆に電子を取り込んで電気的に「負の電荷」を持った状態が陰イオン。

例えば、塩化ナトリウム NaCl を水に溶かすと、陽イオン Na+ と、陰イオン Cl- に別れる。これを「電離」という。
Na+ は、電子配列的にネオン Ne と同じとなり、安定した状態になる。
Cl- は、電子配列的にアルゴン Ar と同じとなり、やはり安定した状態になる。

ネオン Ne や、アルゴン Ar は、不活性ガスといって、他の物質と反応しにくく、化学的に安定した物質であることは、皆さん習ったとおり。

さて、ここまでで、マイナスイオンという言葉はどこにも出てこない。

ネットで探すと、マイナスイオンの説明は、どこか不明確でハッキリしない。そりゃそうだ。学問としてなんら体系的にまとまっていないからだ。
まとまってないのは、研究が不十分か、そもそも学問として成り立たないニセ科学だから。

サイトによっては、「滝の周りが清々しく感じるのは、水が岩にぶつかって細分化する時に、マイナスイオンになるから」という解説がある。物理的に細分化してるだけで、陰イオンになってるわけではないらしい。
もし、水が電離(イオン化)するなら、水素イオン H+ と、水酸化物イオン OH- が生成されているはずである。
せいぜい数メートルの落差で水が岩に叩きつけられて、電離が起こるようなエネルギーを得ているとは当然考えにくいし、あるはずがない。水はそもそも共有結合だ。

百歩譲って、マイナスイオンが学術的にイオンの仲間だとするなら、そのもとになっている原子(多原子)の化学式は何なのか? そこを言及しているサイトはない。
ただただ、「マイナスイオンが発生する」としか書かれてない。

これが、マイナスイオンはニセ科学と判断する理由。

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2013-06-23 23:59 一部修正

2013年6月8日土曜日

科学リテラシーを養ってる?

「科学リテラシーに乏しい人が多い」と常に感じている。

まず、言葉の定義から。「科学」は日本語だから誰でも分かる。
リテラシーとは、元々は「識字」、つまり、文字を読み書きできる能力の事。
ここでの意味は、Wikipedia によれば、
何らかの表現されたものを、適切に理解・解釈し、分析し、また記述・表現する能力
だそうだ。
まとめると、「科学的な事象に対し、適切な判断ができる能力」ということになる。

これに欠けていると思われる人が多い。

別に専門家のような知識が必要だと言っているわけではない。
みなさんが、小学校や中学校の授業で習った程度の知識で充分なんだ。

「酵素」が流行っているらしい。体にいいらしい。
でもちょっと待って。そういうの、鵜呑みにしていいの?

そもそも酵素って何?

Wikipedia によれば、
酵素(こうそ)とは、生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子である。
難しい言葉で説明された。
「触媒」とは、何らかの化学反応を促進する物質で、反応の前後で、それ自体は変化しないものを指す。

小学校の理科の実験を思い出して。

「過酸化水素水に二酸化マンガンを入れると、過酸化水素水が分解されて水と酸素が発生する。この時、二酸化マンガン自体は変化せず、反応の触媒として働いた」

これが触媒。上の説明では、「酵素は触媒として機能する分子」とあるので、酵素は、体の中で起こる化学反応を促進する物質だということが分かる。

もう一点。
多くの酵素は生体内で作り出されるタンパク質を基にして構成されている。
 この、「生体内で作り出される」という点が重要。外から入ってくることは無いんだ。言い換えると、「食ったものがそのまま使われるわけじゃない」ということだ。

みなさんは、小学校の理科で、食べたものがどのように消化・吸収されるのかを習った。
ざっくりと、次のように習ったはず。

食べたものは、消化の過程で分解され、
  • 炭水化物は、ブドウ糖になる
  • タンパク質は、アミノ酸になる
  • 脂肪は、脂肪酸とグリセリンになる
分解とは、ざっくりと言うと、「口からはいった食べ物は、小腸の壁から吸収するには大きすぎるので、化学的に(分子レベルで)小さくすること」なんだよね。

もう気づいているだろう。酵素はタンパク質の一種なので、例え口から摂取したとしても、消化の過程で分解されてしまい、そのままの形で体内に入るわけじゃない、というのが結論。

よく聞く例え話の、「頭髪が薄いので、髪を増やそうと思って、髪をたくさん食べました」と同じレベルの話なんだよ。おかしいと思わない?

深い知識が必要なわけではない。基礎的な知識があれば、その延長線上で、「あれ? それっておかしんじゃない?」と気づく能力こそが科学リテラシーなんだと思う。

科学リテラシーを養おうよ。だまされないために。

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2013-06-08 19:32 誤変換を修正

2009年6月26日金曜日

asahi.com(朝日新聞社):宇宙放射線が増加、太陽の活動低調で磁場弱まる - サイエンス

asahi.com(朝日新聞社):宇宙放射線が増加、太陽の活動低調で磁場弱まる - サイエンス

 以前取り上げた宇宙天気に関する記事を見つけた。放射線は主に太陽から届くものがほとんどという解釈だったが、間違いだったようだ。

 記事によると、太陽の活動状況は100年ぶりの低水準となっており、宇宙から降り注ぐ放射線を防ぐ力が弱まっているらしい。地球の地磁気が太陽風を遮っているように、太陽の磁場が宇宙からの放射線を防いでいるが、活動の低下によりその磁場が弱まっているということだ。地球にも地磁気があるが、太陽のそれと比べれば規模がぜんぜん違うので、放射線を防ぐ効果は微々たるものなのかもしれない。

 太陽黒点の活動周期が約11年であることは良く知られているが、100年単位で活動水準が変動するとは初耳だった。まだまだ研究途上であろうが、太陽は謎に満ちた魅力的な天体である。

2009年6月21日日曜日

asahi.com(朝日新聞社):厄介ものの火山灰シラス、資源化に道 しかも無尽蔵 - 環境

asahi.com(朝日新聞社):厄介ものの火山灰シラス、資源化に道 しかも無尽蔵 - 環境

 鹿児島や宮崎の南部に住んでいなければ、同じ九州内でも、シラスについてはあまり知られていないのではないだろうか? 記事中でも紹介されているが、姶良カルデラが形成されることになった火山の大爆発によって、吹き飛ばされた噴出物が堆積したものがシラスである。(現在の錦江湾は、その火山噴火によって吹き飛んだ部分に海水が入り込んで出来た湾である)

 シラスは、珪素を主成分とした砂状の物質で、水はけが良すぎる性質を持ち、保水力が必要な農業用地には不向きだとされる。また、錦江湾に接する陸地には切り立った崖を形成している部分があり、その上にシラスが堆積しているので、大雨のなどに見舞われると水を含んで軟弱化したシラスが一気に崩れ落ち、大規模ながけ崩れを起こすことが多々ある。

 これは、鹿児島市内においても見られ、過去には、市内の至る所で大雨によるがけ崩れが発生し人的な被害も出ている。このようなシラスにまつわる事情が、「厄介者」と表現されているゆえんである。

 過去にも、様々なシラス有効利用化が試されていると思うが、実用化のメドがたっているのは少ないのではないだろうか? 北国の融雪剤としてシラスを使う話などあったが、その後商品化されたという話は聞いていない。このシラスバルーンが、本格的に事業化できれば、ほぼ無尽蔵といえるシラスを有効活用できる道が開け、地元に迷惑をかけた罪滅ぼしができるという格好になるだろう。大いに期待したい。

2009年6月15日月曜日

宇宙天気とは何か? (3/3)

 磁気嵐が起こると、地球にどのような現象が起こるだろうか? 良く知られている現象としてオーロラが挙げられる。私も肉眼で見たことはないが、その幻想的な現象は多くの人々を魅惑してきた。

 オーロラの正体は、太陽風(プラズマガス)が、北極や南極の上空から降り注ぎ、大気の分子と衝突した際に発光する現象だ。つまり、オーロラ現象を観測することで、太陽の活動の様子を間接的に把握することができる。フレアによって噴出したプラズマガスは、早ければ2~3日で地球に到達するそうで、オーロラの発生予測がある程度立つそうだ。

 また、強い磁気嵐が発生すると、電波障害が発生したり人工衛星の故障を招いたりするので、太陽活動観測の重要性は、ますます高まってきていると言える。

 このように、太陽に起因する地球周囲の宇宙空間の環境変化を予測し、諸問題の回避に役立てようという研究がなされている。地上の大気の状況を予測する「天気予報」のように、宇宙の状態を予測する「宇宙天気予報」というわけだ。

 宇宙天気の研究のため、世界各地に設置された観測装置から送られてくるデータを分析するシステムが構築されており、MAGDAS(マグダス)と呼ばれているそうだ。未来の宇宙天気予報士という設定の、「マグダスちゃん」というマスコットキャラクターも作られている。近い将来、本物の「マグダスちゃん」が、テレビのニュース番組で「明日の宇宙天気」を解説してくれているかもしれない。

■九州大学宙空環境研究センター
http://www.serc.kyushu-u.ac.jp/

2009年6月14日日曜日

宇宙天気とは何か? (2/3)

 では、太陽からの放射線や太陽風(プラズマガス)は、地球にどのような影響を与えるのだろうか?

 放射線は、宇宙空間で活動している各種人工衛星や宇宙ステーション、それに宇宙飛行士に直接影響を及ぼす。原子力発電所などで、放射線暴露の危険性がある作業従事者は、放射線量を測定する機械を携帯し規定値以上の放射線に暴露しないように管理される。

 宇宙空間で活動する宇宙飛行士も、宇宙空間から(特に太陽から届くものが強いと思われる)放射線を受け続けている。もちろん地上のように退避する場所はない。宇宙ステーションには、強い放射線対策として避難ルームのようなものがあると聞いたことがあるが、実際にはほとんど役に立たないそうだ。

 増しては、船外活動をしている宇宙飛行士の宇宙服は無防備に近い。地上で1年間に自然界から受ける射線量を、ほんの数分で暴露してしまうこともあるそうだ。そういう意味でも、宇宙飛行士は命がけでミッションをこなしていると言えるだろう。

 太陽風は、地球の地磁気に影響を与える。太陽風はプラズマガスで、帯電した粒子と考えてよい。これが、地球の地磁気にぶつかると起電力が発生する。これが地磁気に影響を与え磁気嵐を惹き起こすそうだ。

2009年6月13日土曜日

宇宙天気とは何か? (1/3)

 先日、小学生向けのイベントに同行し、九州大学宙空環境研究センターの湯元教授の講義を聴く機会があった。具体的な講義内容を知らないまま(半ば勝手に同行し)参加したが、小学生向けということもあって専門用語をなるだけ使わないように配慮されており、門外漢の自分にも分かりやすい内容だった。

 宇宙といえば、真空で何も存在せず、冷たく暗い空間であるというイメージが一般的だろう。しかし、地球の周囲について目を向けると、地球からわずか1億5千万キロの距離に位置する太陽が主役となる。その活動の状態によって、地球周囲の宇宙空間の情況は刻々とダイナミックに変化しているそうだ。

 太陽が、単なる燃え盛る火の玉ではない事ぐらいは、一般常識のうちだろう。しかし、太陽観測技術の進歩によって、相当に複雑な様相を呈していることが分かってきているらしい。

 フレアと呼ばれる現象がある。太陽の表面で発生する大規模な爆発現象である。フレアが発生すると、強い放射線が発生する。これは、早ければ発生から1時間で地球に到達するそうだ。光速度が秒速30万キロであることを考えると相当な速度だ。

※地球に届く太陽の光は、約499秒前(8分19秒前)に太陽から出発したものになる。つまり、今あなたが見ている太陽は8分前の姿である。

 フレアは、同時に太陽のコロナと呼ばれるプラズマガスを吹き飛ばす。宇宙空間に放たれたプラズマガスは太陽風と呼ばれ、時にはそよ風とはいえないほど激しく吹き荒れているという。

 つまり、地球は、冷たく暗い空間にぽっかりと浮かんでいるのではなく、荒れ狂う荒波の真っ只中にあると言ってもおかしくない。

2009年3月11日水曜日

元素記号を擬人化?

ねとらぼ:元素記号を擬人化した「理系男子」が勉強サポート - ITmedia News

 頭にすぐ浮かんだのは、「こんなので勉強になるのか?」という疑問。確かに、教科書のように、堅苦しい文章と味も素っ気も無い図がぎっしりと詰め込まれていれば、勉強する気も失せるかもしれない。だとしても、元素記号を擬人化したところで、勉強がはかどるのだろうか?

 自分が受験生だった時代から、「受験のための勉強」というのは確かにあった。要は受験したい学校の入学試験の傾向を把握して、そこにだけ集中して勉強するわけだ。それは、既に「物事を学ぶ姿勢」から大きくかけ離れている。

 と、ここまで書いて、当該サイトを見に行く。

 何だ、ネタサイトじゃないか。

 逆だね。「勉強できます」をエサにしたコンテンツ商品だ。この振り上げた握りこぶしをどこに持って行けば良いのか、途方にくれた…。

2008年9月18日木曜日

人工ブラックホールは地球を飲み込むか?

 これじゃ、まるで大衆週刊誌の出来の悪い見出しだ。

 欧州原子核研究機構 CERN で完成し実験が開始された、大型ハドロン衝突型加速器 LHC にまつわる話だが、実験での発生する極小ブラックホールが地球を飲み込んでしまうのではないかと、実験中止を訴える人たちが少なからずいたようだ。

 「何を世迷言を…」

 などと、ナウシカのクロトワのようなセリフを内心吐きながら、無知は罪であると常々感じている自分自身は、今回の実験に関してどれだけの知識を持っているのだろうか、と、はっとした。さっそくググって調べてみる。

 粒子加速器を使った素粒子実験の歴史は、そんなに浅いものではない。なぜ LHC が耳目を集めているかというと、その性能がこれまでとはケタ違いだからのようだ。

 例によって素人の付け焼刃的解説だが、お付き合いいただきたい。

 手元にある1990年刊行の解説本によると、当時の米フェルミ国立加速器研究所の粒子加速器の性能は、陽子に1兆8000億電子ボルトのエネルギーを与えることができるとある。つまり、1.8 TeV(テラ・エレクトロン・ボルト)となる。
 今回稼動開始した LHC のそれは、7.0 TeV ということなので、ケタこそ同じだが段違いだ。これほどの高エネルギーをもった粒子同士が衝突すると、宇宙の始まりがそうであったと言われる「ビッグバン」に近い状態を再現できるということだ。

 20世紀最大の発見といわれる一般相対性理論だが、実はこの世の中の全てを記述できる理論ではないらしい。特に物質の極小レベル、つまり素粒子レベルを記述しようとすると、うまくいかなくなってしまう。アインシュタイン自身も素粒子論にはあまり良い印象をもっておらず、「神はサイコロを振らない」という名言(迷言?)を残している。

 その素粒子論も、この世の全てを記述できているわけではない。理論上は存在が予言されていても、発見に至っていない素粒子も多いという。ヒッグス粒子もそのひとつで、「なぜ物質が集まると重力が発生するのか?」の鍵を握る素粒子だそうだが、LHC の実験で発見が期待されている。

 その宇宙の起源を探る実験だが、どこからどう沸いて出たのか知らないが「実験で強力なブラックホールが出来て地球を飲み込んでしまう」というアホな噂話が飛び交ったそうだ。

 仮に(本当に仮にだ)、実験でブラックホールができたとしよう。陽子同士の衝突で発生するブラックホールの質量は、衝突した陽子の質量の合算以上には絶対にならない。となれば、その質量は「取るに足らないレベル」だ。仮に、それが「事象の地平面」を形成するまでに凝縮されブラックホールとしての体を成したとして、その半径は計測もままならない程度のものになるだろう。

 「いや、それでもブラックホールであることには間違いない」

 世迷言集団は、そう反論するかもしれない。理屈には理屈で対抗しよう。

 スティーヴン・ホーキングが発表した「ブラックホールの蒸発理論」によれば、ブラックホールは巨視的には徐々に質量を減らしていく。そして、あるポイントを過ぎると加速度的にエネルギーを撒き散らし蒸発してしまう。
 つまり、どのブラックホールも緩慢な消滅の道を歩んでいく。そして、その消滅の速度は自身の質量に反比例して速くなる。たとえ計測もままならないブラックホールが生成されたとしても、光が1ミリも進めないぐらいの間(あくまでも例えだが…)に消滅してしまうだろう。地球を飲み込む暇なんてありえない。

 すべての人間が素粒子論を熟知している必要は無い。しかし、理系のセンスというもは持って欲しい。噂話が「ウソ臭い」のか「現実味があるのか」ぐらいはかぎ分けられるセンスだ。

 例えば、
 「蛇口に挟むだけでトリハロメタンが除去できる浄水器」(ただの強力磁石じゃん)
 「健康に良い純度99.9%のゲルマニウムをちりばめた腕輪」(ただの金属じゃん)
 「遠赤外線を出して体によいトルマリン入りの…」(永久機関か?)
とか、の事。

 こんなのにひっかかるヤツが悪い。そう、ごもっとも。もっと勉強しようよ。なんか変だなと思ったらネットで調べればいいじゃん。きっと、賛否両論の記事がたくさん見つかるだろう。
 だが、擁護してるページは、だいたいが業者関係者によるものと言っていい。なぜなら内容が一字一句違ってないからだ。両論、くまなくページを巡回すれば、おのずと何が正しいのか判断できるだろう。ウェブの無かった時代では無理だったろうが、今ならそれが出来る。知の集積所としてのネットを活用すべきだ。

 ブラックホールから、トンデモ商品まで、幅広い話題だね。

ちなみに、CERN は WWW 発祥の地とされている。昔は CERN httpd とかあったよね。今もあるかな?

【追記】
 「加速された陽子同士の衝突でブラックホールが生成されたとしたら」の思考実験だが、厳密に言うと加速された陽子の質量は静止状態のものより重くなっている。加速器によって加速された陽子は、光速に近づくにつれて遅くなる。つまり、与えたエネルギーの全てが移動エネルギーに変換されなくなる。これは、一般相対性理論の基本原則である「物質は光速を超えて移動できない」という縛りにあうからだ。では、与えられたエネルギーはどこに消えたかというと、陽子の質量に変換されている。つまり、陽子は重くなっている。これが、どれだけの重さになっているのかは計算式から導けるとは思うが、ここでは詳しくは触れない。どのみち、増加した質量はとるに足らないレベルだろう。

【追記2】
タイトルのタイポを修正。

【追記3】
「光速度不変の原理」は、特殊相対性理論の基本原則でした。付け焼刃ばればれ。

2008年5月8日木曜日

NHK が、「かぐや」のハイビジョン映像を公開

NHK、月探査機「かぐや」のハイビジョン映像を公開
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20080507/nhk.htm

 月周回衛星「かぐや(SELENE)」に搭載された、NHK 謹製ハイビジョンカメラで撮影された高画質映像について、広く一般に公開されている状態ではないと、ネット上のあちこちで批判されていたのは、ご存知のとおり。

 MIAU も、公開質問状という形で NHK に疑問を投げかけており、それに対する回答を NHK から既に得ているのも、ご存知のとおり。

 ・「かぐや」ハイビジョン映像公開に関する質問状の送付について
 ・NHKより質問状へのご回答をいただきました

 NHK の回答には、「高画質のストリーミングを行うデータ転送容量がない」とあったが、突然の公開となった。MIAU の公開質問状が、どれだけ影響したのか知る由も無いが、少なくとも、NHK が公開方針を転換するきっかけにはなったのだろう。

 これまで、携帯ゲーム機向けかと勘違いするほどに小さなサイズの映像しか公開されていなかったことを考えると、格段の進歩である。最初からこれをやってくれていたら、ネット上でブーイングの嵐も吹き荒れなかっただろう。

 ただ、惜しいのは、オリジナル映像が 1920x1080 のいわゆるフルハイビジョン仕様であるところを、公開されている映像が 1280x720 である点だ。これでも、一応ハイビジョンの範疇に入るらしいので、とりあえずは良しとするが、最終的にはオリジナル映像の配信をお願いしたいところではある。どうか、その点、よろしく。> NHK さま、JAXA さま

2008年5月4日日曜日

インフルエンザ・パンデミックの予兆

 まず始めに、この記事はいたずらに不安をあおるつもりで書いているわけではない。その点をご理解の上、読み進めて欲しい。

 最近、新型鳥インフルエンザ関係の記事を良く見かけるようになったが、新聞などの記事を読み進めると、意外と信号が黄色になりかけている情況ではないかと感じた。

新型インフルエンザ:鳥インフルワクチン、1000万人事前接種へ
http://mainichi.jp/select/science/news/20080415dde001040044000c.html

 このニュースが異様なのは、新薬の認可が諸外国に比べて遅いと批判されがちな厚生労働省が、プレパンデミックワクチンを臨床試験として6000人に接種するというのだ。ちょっと考えられない事態だ。かなりあわてているように思える。それほどまでに、インフルエンザ・パンデミックが近づいているということなのだろうか?

 また、国立感染症研究所感染症情報センターのページにある、WHO 報告による鳥インフルエンザ感染者数推移をみる限りでは、徐々に増加傾向にあると言えるだろう。

WHOに報告されたヒトの高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)感染確定症例数
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/case200800/case080430.html

 感染症の流行について詳しいわけではないが、このような数値は、指数関数的な推移を示すのではないだろうか? 数値が小さいうちは変動も小さいが、ある時点を境に爆発的な増加に転ずる。

 今朝の某地方紙に、鳥インフルエンザが流行した場合、市民の通勤通学などの外出を規制した場合とそうでない場合の、感染拡大のシミュレーション結果が発表されたという記事が掲載された。外出し人ごみに入れば、それだけ感染拡大リスクが増大するということだ。

 記事にあった、感染拡大予想図(地図上の感染者拡大の様子)を見たとき、正直鳥肌がたった。不謹慎かもしれないが、映画「アウトブレイク」を思い出した。地方都市に突然出現した、未知のウイルスに立ち向かう軍医を描いた映画だ。国防省が感染拡大予想シミュレーションを行うが、またたくまに地図上を赤い丸がおおうというシーンがあった。それを思い出した。

 「アウトブレイク」は娯楽映画だが、もし、エボラ出血熱(劇中では、その亜種という設定になっている)が全米で大流行したら、というシミュレーションでもある。この映画の場合、突然ウイルスを持ち込まれては拡散を防ぎようがないという描写だったが、鳥インフルエンザの場合、まだ対策を講じる時間が残されているだろう。政府は、一切の情報を隠蔽することなく広く国民に開示し、粛々とウイルス対策を進めていって欲しい。

2008年4月23日水曜日

[ MIAU ] 「かぐや」高画質動画インターネット公開について NHK より回答あり

NHKより質問状へのご回答をいただきました
http://miau.jp/1208959200.phtml

 4月11日には回答が届いていたらしい。予想していたのは「回答期限が過ぎても無視を決め込む」だったので、ちょっと意外だった。NHK って、けっこうまともな団体なのかもしれない。

 回答の要点は以下のとおり。

・高画質動画をインターネットで公開をしない理由
 →高画質のストリーミングを行うデータ転送容量が無い

 いやいやいや…。NHK さまほど、運営資金が潤沢な団体が、ネット回線を準備できないってウソくさいですよ。

・NHK と JAXA の間で、どのような取り決めがあるか
 →商業利用以外は無償

 うーんと、商業利用は有償ってことは、要するに、パッケージ販売を希望する会社には金さえ積めば売るってこと? でも、それを買うのは、受信料を払っている国民だよね。アニメ番組のパッケージ販売とは、ワケが違うと思うんだけど。

・高画質動画のネット公開の計画と、学術機関への資料提供の実績
 →学術機関への資料提供は、さまざまな方面へ行っている
 →ネット公開は前向きに検討

 「前向きに検討」って「本当は検討する気なんかないけど、いちおう考えとくね」って意味の常套句じゃないの? 全く持って説得力なし。
 いっぽう、学術機関への資料提供は、地道にやっているみたいで、そこはしっかりと公共放送事業者としての責任を全うしていると評価できる。NASA にも提供してるんだね。なんか、ちょっと誇らしいよ、日本人として。

ディスカバリーチャンネル・カナダの件について言及されてなかったけど、無かったことになってるんだろうか?

2008年4月18日金曜日

観測史上で最重量のブラックホール発見

太陽の180億倍、観測史上で最重量のブラックホール発見
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080417-OYT1T00410.htm

 そもそも全てを飲み込んでしまうブラックホールは直接観測できないそうだ。光をも飲み込むのだから、当然といえばそれまで。が、しかし、自然科学の基本は「客観的な観測データ」である。ブックホールの存在は、それ自体が周辺宇宙に及ぼす影響から「計算上存在する」と認定を受けている状況らしい。そこがブラックホールの面白さでもある。

 さて、記事にあるブラックホールだが、観測史上最も重いそうだ。太陽の180億倍とは何キログラムなんだ、と、想像の枠をはるかに超えている。「観測史上」であるから、観測機器の性能向上に伴って、記録がどんどん塗り替えられていくであろうことは想像に難くない。

 では、理論上最も重いブラックホールの重さはいったい何キログラムなんだろうか? 宇宙物理学を研究しているわけでもない身には見当もつかないが、シロウト考察で導くならば、宇宙がビッグバンで「始まった」時点の宇宙の重さが、理論上最も重いブラックホールの重さではないだろうか?

 逆に、最も軽いブラックホールとはどんなものだろう? 理論上ではマイクロブラックホールは存在するが、すぐに「蒸発」してしまうらしい。「蒸発」の意味が分かりかねるが、とにかくそういうことらしい。ホーキング博士に解説してもらおう。

 発見されたブラックホールは、別のブラックホールが周回軌道をとっているという点で、これもまた非常に珍しい天体と言えるのではないだろうか? 直径2兆キロを12年周期で回っているらしい。時速何キロなんだろう?

 問題を単純化するために、直径2兆キロの正円軌道だとすると、算数でならった円周の計算式から、次のようになる。

  軌道の道のりは、2兆キロ x π = 6.283兆キロ
  12年は、秒数に換算すると、12 x 365 x 24 x 60 x 60 = 378432000 秒
  距離を時間で割ると速度になる。
  6.283兆キロ ÷ 378432000 秒 = 16603.2 km/s

 おおう。秒速1.6万キロ。何か計算間違ってない? 光の速度が秒速約30万キロなのを考えると、それほどの数値ではないかもしれないが、実生活の尺度で考えればケタ違いな速度と言える。実際には長径を2兆キロとする楕円軌道だろうから、これよりは幾分は小さな値になるだろうけど、それでも相当にケタ違いな速度であることには変わりない。

 宇宙っておもしろいな。

2008年4月11日金曜日

[ JAXA ] JAXA が「かぐや」のHDTV月映像をネットで公開

月周回衛星かぐや画像ギャラリー
http://wms.selene.jaxa.jp/index_j.html

>ハイビジョンカメラがとらえた、地球の出と入りの DVD 品質で MPEG ダウンロード可能な動画を追加しました。

サイズ 720x480 とはいえ、これまで公開されていたものに比べれば格段に高画質のものであり、HDTV映像公開に関して大きく一歩前進したと言える。(本当は、フルハイビジョン映像が欲しいところだが…)

今回の公開は、MIAU が NHK へ宛てた公開質問状が少なからず影響を与えたと考えていいだろう。この調子で、公開をどんどん進めていってもらいたいところだ。

>今後とも、NHKと協力しながら、高解像度のHDTV映像を掲載していくように努力していくつもりです。

…という一文が、JAXA が抱える悩ましき事情が存在することを物語っている。もちろん、それは NHK に他ならないのだが、NHK から MIAU に対する公開質問状の返答はまだ返ってきてないようだ。本当に一ヶ月で返答が来るのだろうか?

2007年12月24日月曜日

「かぐや」のハイビジョン映像はどこへ行った?

【MiAUの眼光紙背】第7回:その映像は誰のため?~ネットで視聴できない月の高画質映像
http://news.livedoor.com/article/detail/3432162/

至る所で、異口同音に「なぜネットで公開しないの?」と疑問を投げかけられている。確かにおかしい。

NHK や JAXA の言い分がどうなのか、公式な見解が発表されていない以上、うかがい知ることはできない。が、しかし、これだけははっきり言える。
一般市民の自然な感情として「あれだけ受信料払えとうるさく言う割には、その事業成果が国民に還元されていないではないか」と思うのが普通だ。

NHK が、「本業は放送業だからネット配信はしません」などと口走った日には、「それでは、放送業務と全く関係ない、探査衛星に巨費を投じて専用カメラを開発することは是なのか?」と問いたい。

また、一ヶ月も前の話になるが、NHK は、国内では行っていない「地球の出」ハイビジョン映像を、なんと、ディスカバリーチャンネル・カナダのウェブサイトで公開している。

ディスカバリーチャンネル・カナダが「かぐや」のハイビジョン画像を公開している。しかも…
http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2007/11/post_c08c.html

開いた口が塞がらないとはこの事だ。ありえない。
なぜカナダなのか? なぜ日本ではないのか?

こういう不信を生むような行為を重ねているから、受信料不払い運動が盛んになる。
受信料を無心する時だけ頭を下げて、その後ろ足でドロをかけるような行為に、国民はもっと声を上げるべきだ。

国民をなめるな。